バス停横でヒッチハイクする若者を発見しただけで、幽体離脱しかけた昼下がり

道端に男女が三人。
ダンボールの切れ端を掲げて何やら左手の親指を。
そんな様子を視界の端に捉えたわたくし。

もちろん、つまもその様子に気づき。

つま  「乗せるか?」
わたくし「いえ、乗せませんよ」
つま  「なぜですか?」
わたくし「バス停の横で親指あげてもねぇ」
つま  「バカですね」
わたくし「そうですね、若いって素晴らしいですね」

珍しく意見の一致を見た昼下がり。

わたくし「っていうかアホだろ」
つま  「乗せて、降ろすとき請求するか?」
わたくし「んっ?」
つま  「乗せて、着いて、降りるときに五万円」
わたくし「……鬼」
つま  「なんでッ!」

まぁ、なんといいますかいつものパターンに。
少し会話の方向を変更してみます。

わたくし「あなたのようなかわいい台湾人だったらすぐに乗せるけどね、僕」
つま  「どうした?」
わたくし「どうしたって何?」
つま  「何がほしい? 小銭か? 携帯か?」

警戒心MAXな台湾人のできあがりなわけです。
それにしても小銭とは。いやはやせめてスマホに。

わたくし「何もいりませんよ」
つま  「降りてやってみるか、わたし」
わたくし「何のために? 家、すぐそこ」
つま  「わたし、ハイジャックするわ」
わたくし「……」

ここで問題です。
対処方法を次の㋐~㋒から選べ。

㋐そっと話から戦線離脱
㋑笑って許して敵前逃亡
㋒小馬鹿にして幽体離脱

こたえは全力で㋒。
もちろんスーパーひとし君で。

つま  「乗せてくれるかどうか試すか?」
わたくし「そうね、たまにハイジャックもいいかもね」
つま  「でも、乗せてくれるかい?」
わたくし「かわいい台湾人。ハイジャック、余裕余裕」
つま  「やっぱりぃ?」

こいつバカだ。
左手の親指を力強く立てるわたくし。
右手の親指を力強く立てるつま。

その日の夕食中。

つま  「あの三人まだハイジャックしてるかな?」

またも親指を立てる三人の若者の話が。
そんなことすっかり忘れていたわたくし。
適当に返事を。

その日の夕食は、お碗すりきりいっぱいのピータンおかゆ。
わたくしといえば、先ほどからその存在を無視して、ひたすらにハイボールを。
こんなもの食えるか。そしてこんなに食えるか。
つまが席を外したら、空になったつまのお碗にどうやってこぼさずおかゆをうつそうか考えるわたくし。

しかしつまの会話に食いつく家族が若干名。
そう息子です。

むすこ 「えっ、ママ、ハイジャックするヒトみたの?」

もう、嫌な予感しかシません。
次の㋐から㋒から選べなんてことはしないわけです。

つま  「お昼にね」
むすこ 「まじですごい。空港行ったの?」
つま  「?」
むすこ 「悪い人だった?」
つま  「?」
むすこ 「飛行機を盗むんだよ、ハイジャック」

この状況まずい。
はやくおかゆをうつさないと。
そんなことをぼんやり考え現実逃避するわたくし。

子どもの食事が終わり食卓が片付けられます。
食卓には、飲みかけのハイボールのグラスとすりきりいっぱいのピータンおかゆのみ。
もう、嫌な予感しかシません。

そしてはじまる二度目の宴。ただし今回は地獄。

つま  「ちょっといいですか?」
わたくし「あい、なんでしょ?」

二秒ほどのためが。

つま  「このばかやろうッ!」
わたくし「おおおおお、なんて乱暴な」
つま  「ジャックじゃないじゃなーい!」
わたくし「ジャックではありませんね」
つま  「ジャックじゃなきゃ何ッ?」
わたくし「……それはヒッチハイクといいます」
つま  「もっと早くいえぇぇーー。そしておかゆ食えぇぇーー」

本気で怒られるわたくし。
久しぶりに聞いた、狗屁そして去死吧。

というわけで、正解は㋐。
黒柳さん正解。
わたくしさんは、ぼっしゅーとです。
ででっででっでー。

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