週末には家族で買い物をします。
一週間分の食料の買い出しです。
年に何度か、その任務をひとりで任されることがあるわけですが。
この任務、あまり好きではありません。
本来であれば、額面のない白紙の小切手をもらったようなもの。
喜び勇んで出かけたいところですが、現実はそう甘くありません。
必ずと言っていいほど、厳しい叱咤を頂戴することになるのです。
むすこ、むすめのどちらか一方が病気の時に任務は発生します。
日曜の昼下がり。
つまがおもむろに冷蔵庫を見るところから、すべては始まります。
ダイニングテーブルに座り、ホテルロゴ入りのボールペンを紙に滑らせます。
つまは来日14年ほど。
ひらがな、カタカナ、漢字、数字、ほぼいけます。
たまに、ピーマンが、ピマーンになっているのはご愛敬。
そんな買い物メモを手に、スーパーで任務開始。
難解な買い物メモをちらちらと見ながら、カートを走らせます。
昨日の任務は下記。
巨峰/もも/ピマーン/もやし/肉まん/おかし少々/パン/完熟ト●トのミートソース 100円/キャ●ーラ油 198円/ヨーグルト 100円/アイス/豚挽肉/豚ロース/魚/ドーナツ(おひる)
以上15点。
明らかに一週間持たせるつもりのないラインナップ。
しかも、謎の値段。
それに、ドーナツ括弧おひる。
おそらく、ドーナツは、ダスキンさんが運営しているお店のことなのでしょう。
さんざん悩みながらも買い物を済ませ、ドーナッツを購入。
帰宅し、上官に任務の達成報告。
冷蔵庫に戦利品を詰め込むつま。
落ち着かず、無駄にうろうろするわたくし。
つま 「メモだして」
わたくし「あい」
つま 「………やっぱり。肉まんは?」
わたくし「あっ」
最後に買おうとしていた肉まん。
途中つまからの入電で、幼児用ヨーグルトと冷えピタが追加され、抜け落ちた肉まん。
わたくし「買ってきますね」
つま 「おいしいやつね。その前にレシート」
わたくし「あい」
総額をチェックするつま。
落ち着かず、無駄にきょろきょろするわたくし。
つま 「日曜日のイ●ンは高いね」
わたくし「まぁ、そうなのかなぁ?」
つま 「………ん?」
ショックを和らげるために、むすめを抱きかかえ、胸の前へ。
つま 「もやし………68円って、神経病(せんじんびん)!」
つまの声に、何事かとこちらを振り向くむすめ。
むすめよ、ママのせんじんびんは、全部とーちゃんのせいなんだ。
わたくし「きっとね、3倍おいしいよ、このもやし」
つま 「イ●ンじゃなくて、お前か、ばかやろう」
わたくし「イ●ンさんすいません」
つま 「イ●ンじゃなくて、わたしに謝れ」
その後、サラダ油298円、ヨーグルト158円など、次々と発覚するオーバープライス。
完熟ト●トのミートソースは見つけられず、かわりに228円のボロネーゼを。
ミッションコンプリートならず。
おそらく、一生ダメ上等兵で終わってしまうのでしょう。
つま 「今週ビールなし」
わたくし「あい。肉まん買ってきます」
もちろん、肉まんとビールを買って帰宅。
いそいそと冷蔵庫にビールをしまっているところを捕捉されるわたくし。
ビールは無罪放免。
そのかわりドーナツで問題発生。
つま 「わたしのチョコファッションないんだけど」
わたくし「………なかった」
つま 「て・い・ば・ん。ないわけないでしょ!」
たしかに。
むすこよ、そしてむすめよ。
週末に限って病気はちと厳しい。
元気で健やかに、平日に風邪を引いて、大きくなってくれ。